ペルシャン・レッスン 戦場の教室

ペルシャン・レッスン 戦場の教室

11.11(Fri.) キノシネマ他、全国順次公開
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INTRODUCTION

ナチス占領下の強制収容所。唯一の希望は<架空のペルシャ語>だった。

 第二次世界大戦中、数百万のユダヤ人大虐殺(ホロコースト)が行われたナチス・ドイツの強制収容所。この生存不可能といわれた絶望の場所で、信じがたい方法で何度も処刑を免れた男がいた。それは、ユダヤ人の青年がペルシャ人になりすまし、ナチスの将校に<架空のペルシャ語>を教えるという、驚くべきものだった──。短編小説から着想を得て映画化された本作は、奇抜な設定ながら圧倒的なリアリティが大きな衝撃を巻き起こし、ベルリン国際映画祭のベルリナーレ・スペシャルガラ部門で上映されたのをきっかけに、世界各国の映画祭で数多くの賞を獲得し、絶賛を浴びた。『戦場のピアニスト』『シンドラーのリスト』に続く、ホロコーストを題材とする戦争映画の新たな衝撃作がついに今秋、日本に上陸する──。
 主人公のユダヤ人青年ジルを演じたのは、カンヌ国際映画祭のグランプリ作『BPM ビート・パー・ミニット』のナウエル・ペレーズ・ビスカヤート。4カ国語を操るクワドリンガルを活かし、命がけで偽のペルシャ語を紡ぐ姿を渾身の熱演で体現している。ナチス親衛隊のコッホ大尉役には、『約束の宇宙(そら)』のラース・アイディンガー。ドイツ国内で様々な賞を受賞し、高い評価を受けた演技力を遺憾なく発揮した。監督にはアカデミー賞®ノミネート作品『砂と霧の家』で世界的評価を受けたウクライナ出身のヴァディム・パールマン。膨大なリサーチと綿密な取材に基づき映画化。緊張感が途切れないサスペンスフルな演出と、鋭い視点で描くヒューマニズムによって、圧倒的リアリズムで心打つドラマに仕上げている。

STORY

偽りの言葉で、生き残れるか。

 ナチス親衛隊に捕まったユダヤ人青年のジルは、処刑される寸前に、自分はペルシャ人だと嘘をついたことで一命を取り留める。彼は、終戦後にテヘランで料理店を開く夢をもつ収容所のコッホ大尉からペルシャ語を教えるよう命じられ、咄嗟に自ら創造したデタラメの単語を披露して信用を取りつける。こうして偽の<ペルシャ語レッスン>が始まるのだが、ジルは自身がユダヤ人であることを隠し通し、何とか生き延びることはできるのだろうか──。

CAST

ナウエル・ペレーズ・ビスカヤートジル

1986年3月6日、アルゼンチン生まれ。2003年にアルゼンチンのTVミニシリーズで俳優デビュー。本国のTVシリーズや映画に多数出演して注目され、フランスやドイツなどヨーロッパ作品にも出演するようになる。2017年、パリを舞台にエイズ患者への差別に立ち向かう若者たちを描き、カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた作品『BPM ビート・パー・ミニット』で、HIV陽性という過酷な現実と闘いながら抗議活動の先頭に立つ主人公を演じ、自身もセザール賞有望若手男優賞を受賞、ヨーロッパ映画賞男優賞にノミネートされ、世界にその名を知られる。その他の出演作に、『肉体の森』(10)、セザール賞で監督賞・脚色賞を含む5部門を受賞した感動作『天国でまた会おう』(17)、『イフ・ユー・ソー・ヒズ・ハート』(17)など。

ラース・アイディンガークラウス・コッホ大尉

1976年1月21日、ドイツ生まれ。数多くのTVシリーズや映画に出演するドイツを代表する実力派俳優。オリヴィエ・アサイヤス監督作品で知られ、ジュリエット・ビノシュ主演の『アクトレス ~女たちの舞台~』(14)、クリステン・スチュワート主演の『パーソナル・ショッパー』(16)に出演している。その他の出演作に、『恋愛社会学のススメ』(09)、『HELL』(11)、『処女の誓い』(15)、東京国際映画祭の東京グランプリに輝いた『ブルーム・オブ・イエスタディ』(16)、『マチルダ 禁断の恋』(17)、『カット/オフ』(18)、『ハイ・ライフ』(18)、『ある画家の数奇な運命』(18)、『約束の宇宙(そら)』(19)など。

ヨナス・ナイマックス・バイヤー兵長

1990年9月20日、ドイツ生まれ。2005年にドイツのTVシリーズ「4 gegen Z(原題)」で俳優デビュー。その後もTVシリーズやTV映画に次々と出演しながらキャリアを積み、2013年の『Dear Courtney(原題)』で長編映画に初出演。主な映画出演作に、『König von Deutschland(原題)』(13)、『Hirngespinster(原題)』(14)、『ロストックの長い夜』(14)、『Letnie przesilenie(原題)』(15)、『The Accidental Rebel(原題)』(19)、Netflix配信作品『彼と彼女と君と僕』(21)など。俳優業の他に、音楽バンド「Pudeldame」のボーカルとしても活動している。

レオニー・ベネシュエルザ・シュトルンプフ看守

1991年4月22日、ドイツ生まれ。2007年にドイツ映画『Beautiful Bitch(原題)』で女優デビュー。主な映画出演作に、カンヌ国際映画祭にてパルム・ドールに輝いた、鬼才ミヒャエル・ハネケ監督作『白いリボン』(09)、『Picco(原題)』(10)、ブルーノ・ガンツ主演の『Satte Farben vor Schwarz(原題)』(10)、『8 Seconds(原題)』 (15)、『Brecht(原題)』(19)、『Der Überläufe(原題)』(20)など。その他に、TVドラマの人気シリーズ「ザ・クラウン」(16~)や「バビロン・ベルリン」(17~)にも出演している。

STAFF

ヴァディム・パールマン監督

1963年、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国(現ウクライナ)生まれ。幼少期に難民としてヨーロッパへ渡る。カナダの大学で映画科を専攻し、トロントで自身の制作会社を立ち上げ、CMやミュージック・ビデオの演出の仕事に従事。マイクロソフトやナイキをはじめとした大手企業のCMを手掛け、革新的なCMディレクターとして確固たる地位を築く。2003年にジェニファー・コネリーとベン・キングズレーを主演に迎えた『砂と霧の家』で映画監督デビューを飾り、アカデミー賞®主要3部門にノミネートされた他、自身もナショナル・ボード・オブ・レビュー新人監督賞受賞、インディペンデント・スピリット賞新人作品賞ノミネートなど高い評価を受ける。その他の監督作に、『ダイアナの選択』(08)、『Buy Me バイ・ミー』(18)など。

COMMENT

磯村勇斗俳優

どこで生まれて、どんな家庭で育ったのか分からない。でも一人の青年によって、ユダヤ人の生きた証が、「言語」となって時に刻まれる。僕は鳥肌が止まらなかった。どこか滑稽で、こんなハラハラするレッスンは見たことがない。

宇垣美里フリーアナウンサー

命をかけた出鱈目のペルシャ語レッスン。
コメディのような設定なのに、迫り来る緊張感は呼吸を忘れてしまうほど。
ラストに知る、彼の創り出した言葉たちに込められた意味。
生き残ってしまった者の痛みが、背負わざるをえなかったモノの重みが、
悲しいほどに突き刺さる。

宇野維正映画ジャーナリスト

過去に数多ある強制収容所を題材にした作品の中でも、
すべてが引っくり返るラストの鮮やかさは出色。
『ショーシャンクの空に』を思い出すようなカタルシスだ。

大友啓史映画監督

極限下において捻りだしたでたらめなペルシャ語と、
それを覚える記憶力のみが一瞬一瞬の生命を繋ぎ止める。
諸刃の剣のような"即興"と"想像"、そして命懸けの“フェイク”。
ユダヤ人青年とナチス将校の奇妙な関係を描いたこの映画は、
人間の尊厳と同時に“創造”の本質をスリリングに炙り出す。

川上洋平[Alexandros]ミュージシャン

129分間、ずっと細い糸の上を歩かされているようだった。物語が終わりを告げ、その糸から降りた時、込み上げる虚しさにただただ座り尽くしてしまった。これほどまで切ない緊張感を私は味わったことがない。

佐々木俊尚作家・ジャーナリスト

「いたたまれない映画」というランキングがあったら、史上最高のベスト1になりそう。それなのにラストには「いたたまれなさ」を乗り越えて、大いなる感動までが待っている。

SYO物書き

ペルシャ人になりすまし、即席の言語をナチス将校に教える大博打。
バレた瞬間、処刑。脳と心が悲鳴を上げる試練はいつまで続くのか。
全編、胃が痛くなりそうな緊迫感。だが、物語はそこで終わらない。
幾千もの創作言語の“原典”を知るとき、心に哀の炎が立ち上る。

橘玲作家

極限状況を生き延びるために、いちから言語をつくりあげるという奇想。それはまた、死んでいった者たちを記憶する作業でもあった。近年、ホロコーストをテーマにした作品が次々とつくられているが、そのなかでも強い印象を残す映画だった。

田原総一朗ジャーナリスト

第二次世界大戦中に、ナチス・ドイツの強制収容所に入れられたユダヤ人の男が懸命に嘘八百を並べて生き残る、という奇抜なストーリーがものすごくリアルに描かれている。
収容所の責任者の1人であるドイツの大尉とこのユダヤ人の男との間に、奇妙な信頼関係が生まれる過程も、どの観客にも納得できるはずだ。
多くの映画祭で賞をとったのも当然だと思える。

DIZ映画アクティビスト

このラストは永遠に忘れられない。
緊張感が途切れず、一瞬も目が離せないまま
エンドロールが終わっても立ち上がれなくなるほど、胸が締めつけられる映画だ。

ニシダ(ラランド)芸人

生き残るための心理戦かと思って見始めました。
そんな既存の枠の中にはとどまる作品ではありませんでした。
戦時中の収容所という苛烈な環境下での人間の心の揺れ動きを目の前で見せられました。

人間食べ食べカエル人喰いツイッタラー

設定だけ聞いたら「コメディかな?」と思ったけど、
その中身がまさかこんなヒリヒリする命のやり取りだとは……。
出自は嘘。教える言葉も全て嘘。バレれば殺られる。
でも築かれた関係には本物が宿った。
嘘言語がもたらすラストがずっと忘れられない。

ビニールタッキー映画宣伝ウォッチャー

ナチスの収容所でペルシャ人に扮してデタラメな言語を教えるユダヤ人青年と熱心に習得するナチス将校。二人の奇妙な関係が緊張と苦笑を呼び、心を引き裂き、戦争の虚しさを伝え、そして震えるほどの感動を湧き起こす。

藤井道人映画監督

これほど2時間という時間をあっという間に感じた映画は久しぶりだった。
主人公ジルに次々と降りかかる受難と、彼の生に対する執着が編み物のように入り組んでいき、最後はそう来たか!と感嘆した。トリッキーな設定を剛力で王道に昇華させた力作。